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1,古代インカ帝国から伝わる紫イペ伝説

世界最大の熱帯原生雨林を擁し、「世界の肺」といわれるほどに豊富な酸素をその自然林からつくりだすアマゾン。この自然の中で育ち、太古の時代から「神からの恵みの木」と呼ばれていた紫イペは、ノウゼンカヅラ科タベブイア属の樹木です。(学名タベブイア・アベラネダエ)

熱帯雨林に属するノウゼンカヅラはブラジルでは最もポピュラーな植物のひとつで、約120属、650種の種類があるといわれています。

この木の花の色には白色、黄色、オレンジ色、ピンク、赤紫などがあり、その花の色によって属に白色イペ、黄色イペ、紫イペなどと呼ばれています。なお、黄色のイペの花はブラジルの国花にもなっており、もっともポピュラーな木でもあります。

しかし、薬物学的に見ると大きな薬効を持つものは赤紫色の花をつける紫イペであることが明らかになっています。紫イペはオゾンを豊富に含む樹木として知られますが、黄色の花が咲く黄色イペは治癒効果はあまりありません。

紫イペはアマゾン川流域の熱帯雨林に自生する高さ30〜40mにもなる巨木です。
地上から20〜30mには枝葉がなく、木の上部にだけ枝葉が出て、そこに赤紫の花をつけます。幹の太さは直径60cmほどで、幹を覆う樹皮の内側に薬効成分が含まれています。この紫イペは、人工栽培が不可能で、薬用として用いる場合は、ブラジル国内で自生しているものを使わなければなりません。

ブラジル人たちは古くからアマゾンに自生するこの樹木を民間薬として愛用してしました。また蠅取草と同じように昆虫を食べる食虫植物でもあります。

赤紫色の花が咲き、昆虫を食する樹木の皮は、インカ帝国でも利用され、アンデス部族は傷薬や薬用茶として利用し、それが腸チブス熱、アメーバー赤痢・硬変症・貧血症の予備に役立ったといわれています。

インカ帝国のモンテズマ王朝の時代にメキシコを支配していた頃、紫イペはすでに「神からの恵みの木」として飲用されていたことがわかっていますが、これが、白人たちにも広がり評価されていったのは18世紀になってからのことでした。

またバイキング(海賊)は、紫イペを「奇跡的な木」として80年間に渡って商いの品にしたといわれ、売買の方法は金や宝石とのみ交換をしたそうです。

ロシアのザー皇帝は、130年の長寿を保ったことでその名を知られていますが、彼の日常は毎日欠かさず紫イペ茶を一服することだったといいます。

インド解放運動の指導者ガンジーも30年間にわたって紫イペを愛好しながらヨガを行ったといわれています。

このように古代から「神からの恵みの木」として重宝された紫イペ。この木が「紫イペ」と呼ばれるのはサンパウロ周辺でのことです。それ以外にも時代や地域によってさまざまな呼ばれ方をしてきました。

古代インカ、コロンビアあたりでは「タヒボ」

アルゼンチンでは「ラパーチョ」、「モラド」

バイーア州、ブラジル北部、東北部では「紫パウダルコ」、「パウダルコ」

国や時代が違えば、言葉も変化していくように、紫イペの呼び方もいろいろ違っているようです。しかし、このいずれも同じ樹木であることに変わりはありません。

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